以前の植物葉での研究において、クロロプラストに局在する短鎖(C_<50>-C_<65>)ポリプレノールとミクロソームに局在する長鎖(C_<70>-C_<85>)ドリコールは、それぞれ異なったシスイソプレン鎖延長酵素によってそれらの炭素骨格が生合成されることを示した。今回、ドリコールリン酸生合成に変異を持つイースト#64変異株を用いて相補実験を行った。#64-1、#64-2、#64-4において温度感受性が回復し、ポリプレノールからドリコール生合成に関連するタンパク質の存在が期待された。この変異株の研究において、イーストでは存在していないとされる短鎖(C_<55>-C_<60>)ポリプレノールが#64、#64-1、#64-2において検出された。この事実から、通常のドリコール生合成に必要なシスイソプレン鎖延長酵素のみならず、未知のシスイソプレン鎖延長酵素の存在が示唆される。又野生株ではこの短鎖ポリプレノールが検出されないことから、このポリプレノールは中間体と思われる。 一方、シスイソプレン鎖延長酵素を含めてのドリコール生合成に関する研究として炭素鎖長の異なるビオチン化ポリプレナルを有機合成し、in vitroでのポリプレノール還元反応に対する影響を調べてみた。炭素鎖長C_<15>のビオチン化ファルネサールやC_<55>のビオチン化ポリプレナールは影響しなかったが、C_<80>のものは阻害効果を示した。界面活性剤であるトリトンX-100、CHAPS、オクチルグルコサイド、デオキシコール酸、ツウーン80と比べて、C_<80>のビオチン化ポリプレナールによる阻害は特異的であった。SDS電気泳動により、C_<80>のビオチン化ポリプレナールと親和性を持つ約5万の分子量のタンパク質が検出された。これらのことから、シスイソプレン鎖延長後の還元過程が、このタンパク質による鎖長認識を伴っていることが示唆される。
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