研究概要 |
イトマキヒトデの胚発生を初期原腸胚の段階で選択的に停止させる活性およびヒストン2量体の生成を阻害する活性を指標として,放線菌の培養液から生理活性物質を探索した結果,Micromonospora属の放線菌のブタノール抽出物中から3種の新規生理活性物質を見出し,Micromonospolides A, B, Cと命名した。一次元および二次元NMRスペクトルデータ等からバフィロマイシン型の16員環ラクトンを持った新規マクロライド類と構造決定した。絶対配置は,改良Mosher法および化学変換によって決定した。これら新規マクロライド類はいずれも,イトマキヒトデの胚発生を初期原腸胚の段階で停止させる活性を示した。イトマキヒトデ胚では中期胞胚期にヒストンが架橋2量化することが見出されている。Micromonospolide A(0.1μg/mL)の存在下で発生停止したイトマキヒトデ胚について,ヒストン2量体の有無を調べた結果,ヒストン2量体p28は生起していなかった。Micromonospolide AのnTGaseに対する効果を調べた結果,Micromonospolide AはnTGaseを阻害しなかった。nTGaseを特異的に認識する抗体を用いてWestern blotting解析を行った結果,Micromonospolide Aを0.1μg/mLの濃度で添加した海水中で発生したイトマキヒトデ胚にはnTGaseが検出されなかった。これらのことから,Micromonospolide Aは,イトマキヒトデ胚の中期胞胚期でnTGaseの合成を阻害することによってヒストン2量体の形成を妨げ,胚発生を停止させたものと考えられた。
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