研究概要 |
炭素・炭素結合生成とその立体制御を効率的に行うための有効な手段の開発を目的として、活用例の乏しいα-ヒドロキシシランを用いて次の研究を行った。 1.トリアルキルシリル基の立体遮蔽効果を期待し、α-ヒドロキシシランから誘導されるα-アシロキシシランの[3,3]シグマトロピー転位により、光学活性ケイ素含有アミノ酸類の合成を行った。すなわち、α-ヒドロキシアルケニルシランのα-アミノ酸(Boc-Gly、Boc-Ala、Boc-Phe)エステル誘導体を種々合成し、それらのエステルエノラート型クライゼン転位を検討した。その結果、α-ヒドロキシシランの不斉がアミノ酸のαおよびβ位に完全に転写された種々のビニルシランをもつ光学活性α-アミノ酸が高立体選択的に合成できた。(Chirality 2001,13,357-365.に発表)また、本方法を用いて、キノコより単離された新規アミノ酸の合成に成功し、その絶対配置を決定できた。(Chem.Commun.2002,42-43.に発表) 2.ケイ素のα位にカチオンを積極的に発生させた研究例はこれまでにない。我々はα-ヒドロキシシクロプロピルシランの酸処理によりα-シリルカチオンが生成して転位反応が進行することをすでに見いだしている。そこで、α位にシクロプロパンや炭素多重結合が連結した種々の光学活性α-ヒドロキシシランを合成し、α-シリルカチオンの生成と反応性を調べた。その結果、いくつかのα-ヒドロキシシランは酸性条件下α-シリルカチオンを経て不斉保持で転位成績体を与えること、ケイ素のα位の置換基が、シクロプロパン、二重結合、三重結合の順にカチオンが発生しにくくなり反応性も低下すること、また、飽和体のα-ヒドロキシシランからは同条件でα-シリルカチオンは生成しないことを見いだした。(投稿準備中)
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