研究概要 |
インスリンは代謝調節、細胞増殖因子として生体必須のホルモンであり、その作用メカニズムを解明することは医学・生物学上極めて重要な課題である。我が国には約700万人のインスリン非依存型(II型)糖尿病患者がおり、4大疾患の1つに指定されている。それは標的細胞のインスリン作用不全に1つの主な原因があると考えられており、その病因の解明が緊急の課題となっている。 インスリンの代表的作用である「細胞内へのグルコース取り込み促進」には、細胞増殖シグナル伝達因子であるPI3-キナーゼの活性化が必須であることを世界に先駆けて報告した(BBRC,1993,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1994.)。PI3-キナーゼの下流にはAkt, atypical PKCがあることが報告されている。しかしAkt, atypical PKC (PKCζ, PKCλ)のどちらがインスリンによるGLUT4のトランスロケーションに関与しているのか、異なる多くの報告がなされており、まだコンセンサスを得ていない。そこで我々が開発したGLUT4mycを安定に発現させた培養細胞に、Akt1,2,3を特異的に抑制するRNAiを合成し導入した。その結果Akt1,2共にGLUT4のトランスロケーションに関与するが、Akt2の経路が主であると考えられた。また、アデノウイルスの系を用い活性型Akt、ドミナントネガテイブ型Aktを一過性に発現させ、AktがGLUT4トランスロケーションに関与していることを明らかにしている。そこで次にAktのPHドメインと結合するタンパクがインスリン作用を伝達する因子である可能性が考えられる。PHドメインを大量精製し、それも結合するタンパクを抽出、プロテオミクスの手法でAktの基質を探索する計画を進めている。
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