研究概要 |
1)ペルオキシソーム欠損症における相補性群6群について再検証した結果、4群と同一相補性群であること、PEX6の発現によりペルオキシソームの形成不全が相補されかつPEX6における病因変異del207-292,del699-787を見出した。この結果、ペルオキシソーム形成異常症は現在のところ12種の相補性群に分類されることを報告した。 2)12種の相補性群のうち8群はいまだに相補遺伝子が単離されておらず、病因(遺伝子)が解明されていない唯一の相補性群であった。本研究では8群の相補遺伝子を単離することでこの相補性群における一次的病因を解明した。機能相補クローニングの結果、ペルオキシソーム形成能を回復させるヒトcDNAの単離に成功した。このクローンは305アミノ酸からなるタンパク質をコードしており、これまでに報告されているすべてのペルオキシンとも顕著な相同性が認められないことから新規ペルオキシンPex26p(PEX26)と命名した。A群の患者由来細胞で変異部位解析を行ったところ、病因となる遺伝子変異(R98W)を同定した。このようにPEX26はA群の相補遺伝子であること、さらにAAAタンパク質ファミリーに属する2種のペルオキシン、Pex1p, Pex6pと機能的に密接な相関を持つことを明らかにした。 3)最も患者数の多い1群の相補遺伝子であるヒトPEX1を単離し、病因となる遺伝子変異を既に同定している。本研究では、これらの遺伝子変異と臨床病型との相関を明らかにした。重症型の患者から同定したL664P, del634-690変異はPex6pに対する結合能を著しく低下させ、また軽症型の患者で同定されたG843DはPex1pの安定性を温度依存的に失わせることを見いだした。さらにPEX1のスプライシング異常によってPex1pの機能欠損につながる複数の症例があることを報告した。
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