研究概要 |
GCP170結合タンパク質を検索する目的でHDのゴルジ体局在ドメインを含むアミノ酸137-247をbaitにしてHeLa細胞cDNA libraryを用い酵母two-hybrid screeningをおこなった。その結果、137アミノ酸から成る分子量16kDaの蛋白質を同定し、GCP16(Golgi complex-associated protein of 16kDa)と命名した。本蛋白質は哺乳動物のすべての臓器、特にその機能的な分化にゴルジ体が大きな役割をはたす精巣及び卵巣で優位に発現していた。またショウジョバエや線虫においても相同体が存在した。抗GCP16抗体を用いて内在性GCP16の局在を調べ、giantinやGCP170と共に局在すること、さらに免疫電顕像では、ゴルジ嚢の細胞質側に局在することを確認した。BFA処理による局在変化を調べた結果、GCP170がBFA処理後2分程度でゴルジ体から分散するのに対し、GCP16は5〜10分でようやくゴルジ体から分散し始めた。また、GCP16は疎水性の膜貫通領域を欠くにもかかわらず、強い膜結合性を示した。^3H-パルミチン酸の取り込み実験を行ったところ、GCP16は効率良く標識された。これらの結果はGCP16が脂質アンカー型膜蛋白質であることを示す。GCP16には4個のシステイン残基が含まれているが、このうち69と72番目のCysをAlaに置換した変異体は^3H-パルミチン酸で標識されなくなり、ゴルジ局在及び膜結合性も失われた。したがって、GCP16は69と72番目のシステイン残基がパルミチン酸によってアシル化され、このパルミチン酸を介して膜に結合する脂質アンカー型膜蛋白質である。GCP16変異体(Cys^<69,72>→Ala)の過剰発現ではVSV-G輸送の阻害はみられなかったが、野生型GCP16を過剰発現時すると、VSV-Gはゴルジ領域に停留され、細胞表面への輸送が阻害された。また野生型GCP16の過剰発現は分泌タンパク質のゴルジ体から形質膜への移行過程をも阻害した。しかし野生型GCP16の過剰発現はGCP170のゴルジ体局在には影響を与えなかった。一方、GCP170のGCP16結合部位は、ゴルジ体局在に必要な領域と同様にN末端領域に存在するが、両者は隣接する異なる領域に存在することがわかった(論文投稿中)。 以上の結果、GCP16はGCP170のゴルジ体結合部位に近接して結合しゴルジ体間またはゴルジ体から形質膜の小胞輸送に働く未知の機能を持つタンパク質であることを示す。
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