○ 転写因子HSF3のDNA結合ドメインと、これと相互作用するタンパク質のDNA結合ドメインとの相互作用領域について、Lys架橋試薬を用いて解析した。2つのDNA結合ドメインを1:1のモル比でインキュベーシヨンした後、Lysの架橋試薬であるBS^3(bis(sulfosuccinimidyl)suberate)を加え、室温で反応させた。トリス緩衝液を加えることにより反応をクエンチした後、SDS-PAGEにより目的生成物であるヘテロ2量体を分離した。ヘテロ2量体のバンドをゲルから切り出し、還元アルキル化後、トリプシンでゲル内消化を行った。得られたペプチド混合物について質量を正確に求め、架橋されたLys残基の位置の同定を行った。 ○ 複数のドメインを有する2つのDNA結合タンパク質(転写因子HSF3、基本転写因子TFIIE)について、前項のような方法で構造解析を行うことを目指し、それぞれを全長で発現および単離・精製することを試みた。HSF3は、全長については、構造解析に利用することができるレベルの試料を大腸菌で大量発現することが難しく、種々プラスミドの構築、大腸菌の種類など発現系に関してさまざまな検討を行い、発現系を確立した。TFIIEは、α、βの種類のサブユニット2つずつからなるヘテロテトラマーで、それぞれについて発現・精製を試みた。TFIIEβは単離後、長期保存が難しいこと、TFIIEαは、試みた系では発現量が少なく、また精製が進むにつれて会合することが確認されたため、発現系・精製方法の検討を行った。両タンパク質について精製後、前項で述べたクロスリンク法による解析を検討する。 ○ 脂質との相互作用によって生じるタンパク質やペプチドの構造変化について、タンパク質-タンパク質の相互作用部位の解析にも応用できる方法である水素/重水素交換と質量分析を組み合わせた方法で解析し、得られた結果をまとめた。
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