目的 インスリンによる代謝調節機構においてはPI3キナーゼとその下流に位置するセリン・スレオニンキナーゼであるPKB/Akt、PKCζ、PKCλなどが関与することが知られている。SGKは全体のドメイン構造はPKB/Aktと異なっているが、キナーゼ領域はPKB/Aktと非常に類似している。さらに、インスリンにより活性化が観察されている。以上のことからインスリンシグナル伝達系にSGKが関与するのではないかと考え、その手がかりとして、相互作用するタンパクの検索を行った。 結果 (1)SGK結合タンパク質の同定 SGKと相互作用するタンパク質を同定する目的で、ヒト脳から作製したcDNAライブラリーをSGKをbaitにした酵母2ハイブリッドスクリーニング法にて検索した。その結果、SGK結合タンパク質としてアダプタータンパク Mint2が同定された。Mint2は様々なタンパク・タンパク相互作用部位に見られるPDZドメインを2個持っているが、SGKはそのうちのC末に存在するPDZドメインと会合した。SGK・Mint2の会合はSGKを活性化する試薬である過酸化水素の添加により増強された。 (2)IGF1によるSGKを介したK+チャネルの活性化 IGF1はインスリンと類似した成長因子で細胞の増殖や、アポトーシスの調節に関与している。一方で、近年、SGKが電位依存性のイオンチャネルの活性化に必要であるという報告があった。そこで、IGF依存性のSGKの活性化がK+チャネルの活性化に関わっているかを検討した。ヒト293細胞のK+チャネルの活性および発現をパッチクランプ法、RT-PCR法などを用いて検討したところ、その過程にSGKが必須であることを明らかにした。
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