グルタチオンは、生体抗酸化系として重要な働きを担う低分子SH基化合物である。哺乳類細胞の形質膜上には、x^-_c系と呼ばれるシスチン・グルタミン酸交換輸送系が存在し、シスチンを細胞内に取り込むことによって、グルタチオン合成の律速前駆体であるシステインを供給し、細胞内グルタチオンレベルを制御している。x^-_c系の輸送活性は、種々の刺激で強く誘導されることが知られている。本研究では、x^-_c系の輸送活性を担うタンパク質xCTのmRNAの転写が酸化ストレスによってどのようなメカニズムで制御されているかを昨年に引き続いて解析し、以下のような結果を得た。 1)マウスxCT遺伝子上流に存在するelectrophile response element (EpRE)は4箇所あり、そのうちの1箇所に転写因子Nrf2が作用することによって、親電子試薬によるxCT mRNAの転写が促進されることが明らかとなった。 2)シスチン欠乏によるxCT mRNAの転写制御機構を調べたところ、xCT遺伝子上流約90bp付近に存在する配列が重要であることがわかった。また、この配列は、親電子試薬によるxCT mRNAの転写制御とは、独立のものであることが示された。 3)マウス個体においては、脳室周囲器官や髄膜などでxCT mRNAの発現が見られたが、細菌性リポ多糖投与による炎症モデルでは、脳の脈絡叢や胸腺、脾臓などでもxCTmRNAが誘導されることが明らかとなった。 4)x^-_c系は、xCTと4F2hcとのヘテロダイマーとして輸送活性が発現する。4F2hcと構造的に相同性のあるrBATは、他のアミノ酸輸送系の構成因子であるが、xCTとrBATの組み合わせでも、x^-_c系の活性を発現することが示された。
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