グルタチオンは、生体抗酸化系として中心的な働きを担う低分子SH基化合物である。哺乳類細胞の形質膜上には、x_c^-系と呼ばれるシスチン・グルタミン酸トランスポーターが存在し、細胞内グルタチオンレベルの維持に重要な役割を担っていることが知られている。x_c^-系はの活性は、酸化ストレスなどにより強く誘導されていることが知られている。本研究では、Xc^-系を構成するタンパク質であるxCTの酸化ストレスによる発現制御機構を調べ、以下のような結果を得た。 1)xCT遺伝子上流、約150bp付近に存在するelectrophile response element(EpRE)を介して親電子試薬によるxCTの発現が制御されていることが明らかとなった。また、この領域に、転写因子Nrf2が相互作用することによって転写が制御されていることが明らかとなった。 2)細胞内レドックスバランス状態を変えると考えられるシスチン欠乏条件下でも、xCT mRNAの転写が誘導されるが、この誘導には、EpREのさらに下流に存在する30bp程度の配列が重要であることが示唆された。 3)xCT mRNAの個体における発現を調べたところ、脳や胸腺など限られた組織での発現が認められた。脳では、特に脳室周囲器官と呼ばれる領域で、強い発現が見られた。 4)x_c^-系は、xCTと4F2heavy chain(4F2hc)とのヘテロダイマーとして輸送活性を発現する。4F2hcと相同性のあるrBATは、他のアミノ酸トランスポーターの構成因子であるが、xCTとrBATを共発現させることによって、x_c^-系の輸送活性を示すことが明らかになった。
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