様々な生物で、細胞内構成物を極性にしたがって配置するのにクラスVミオシンが働いている。クラスVミオシンは、N末側にモーターをC末側にカルゴ結合部位があり、C末に結合したカルゴをN末モーターがアクチンフィラメント上を移動することで運搬し、カルゴのアクチン細胞骨格依存的な極性配置を行う。このミオシンによる極性配置の制御機構を明らかにする目的で、出芽酵母クラスVミオシンのMyo2をモデルとして解析した。Myo2pのC末ドメインと結合するタンパク質をTwo-hybrid法で検索した。また、myo2変異を抑圧するような多コピーサプレッサーを検索した。いずれの手法によっても低分子量GTPaseであるYpt11pが同定された。Ypt11pは、免疫沈降法により、実際にMyo2pC末ドメインと結合することが示された。また、遺伝学的手法により、このタンパク質相互作用がYpt11p機能に必要であることがわかった。そして、Ypt11pは、ミトコンドリアの極性配置に関与する因子であることを明らかにした。また、Ypt11破壊を用いた方法で新たなmyo2変異株を単離し、その表現型より、いままで否定されていたMyo2pのミトコンドリア極性配置機能が存在し、ミトコンドリア分配に本質的なものであることを明らかとした。ミオシンと相互作用する極性分配に関与する因子としては、カルゴ上に存在するミオシン受容体を構成する因子が他の系でいままで、3種類報告されているが、Ypt11pは、ミトコンドリア上に存在するMyo2p受容体を構成しているとは思えない性質をしめしている。このことから、Ypt11pの関与する経路は、今まで知られていないミオシン極性配置機構の存在を強く示唆するものである。
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