HGF activator inhibitor type-1(HAI-1)は、肝細胞増殖因子(HGF)の活性化酵素であるHGF activator(HGFA)に対する阻害タンパク質として同定された。HAI-1は2つのKunitzドメイン(N-末端側のKunitz IおよびC-末端側のKunitz II)をもつ膜貫通タンパク質として生合成される。その後プロテアーゼによりプロセシングを受け、Kunitz Iのみからなる40kD HAI-1、両方のKunitzドメインをもつ58kD HAI-1として分泌される。本研究ではプロセシングにともなって生成する産物の機能を明らかにするためにCHO細胞を用いて各種HAI-1変異体を大量調製し、機能解析をおこなった まず、両Kunitzドメインについて、各々、欠失変異体を作成したところ、HGFAに対する阻害活性は主にKunitz Iにあることがわかった。また40kD HAI-1の産生にともなって細胞膜上に残される分子種(Kunitz IIを含む)にはHGFAへの結合性がないことを明らかにした。 いっぽう、HAI-1の全長タンパク質はHGFAに強い結合性を示すが、58kD HAI-1はHGFA結合能が非常に低い。58kD HAI-1の各KunitzドメインのP1部位に変異を導入して検討したところ、Kunitz IとKunitz IIが相互にマスクしあってお互いの機能を修飾していることが原因であるとわかった。 以上の結果は、HAI-1がプロセシングにより構造変化し、複雑な活性制御を受けていることを示している。今後は、このようなプロセシングが生体内でどのように利用されているかについて検討を進めていく予定である。
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