研究課題
出芽酵母GTS1遺伝子の発現は、酵母を連続培養したときに現れるエネルギー代謝系のリズムに共役して変動し、リズムの生成・共役機構に重要な機能を果たしていると考えられる。まず振動的転写調節に関与する遺伝子上流領域を同定するために、大腸菌lacZ遺伝子をレポーターとして、種々の長さのGTS1遺伝子の5'上流領域(185bp、357bp、1045bp、1582bp)を用いて検討した。バッチ培養では、最も短い上流185bpの配列を持つlacZ組換えプラスミドが他のものに比べ最も高い転写活性を示した。連続培養では上流領域を持つGTS1遺伝子のみがGTS1遺伝子破壊株で消えていた細胞周期と同調したエネルギー代謝のリズムを回復できた。しかしストレス耐性との共役は回復できなかった。上流357bpをもつものでは、リズムそのものの回復が見られなかった。一方1045bp、1582bpの上流領域をもつものは、エネルギー代謝のリズムとともにストレス耐性との共役も回復できた。したがって基本的なGTS1の振動性発現には、185bp上流までの領域が必要で、ストレス耐性との共役には1045bpまでの領域が必要であることが示唆された(発表済み)。Gts1蛋白質レベルの変動はGTS1mRNAの変動とほぼ逆位相で振動し、合成が転写レベルで調節されている事が示唆された。Gts1蛋白質に存在するN-degronとUBAドメインの2つの領域に変異を加え、蛋白質レベルがどのように変化するかを調べた。その結果、いずれのmutantにおいても、Gts1蛋白質レベルの振動は消失し、連続培養におけるエネルギー代謝系のリズムは消失した。さらに、免疫沈降によりGts1蛋白質とユビキチンが結合すること、Two Hybrid法により互いに相互作用があることからGts1蛋白質がユビキチン・プロテアソーム系により分解を受け、これがエネルギー代謝系のリズム形成に関わっているものと考えられた(投稿中)。
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)