研究概要 |
抗原非特異的サプレツサー因子(MNSF)受容体を介する細胞内情報伝達を明らかにする目的で、リガンド(MNSF)の性状を詳しく解析した。天然型MNSFはインターロイキン12(IL-12)と同様に2個、あるいはそれ以上のサブユニットから構成されることをこれまでに明らかにしている。既にクローニング済みのMNSFβサブユニットの遺伝子組換え型をビオチン化して、accessory分子と考えられるMNSFαサブユニットの生化学的特性を検討した。抗MNSFα抗体と逆相HPLCで精製したMNSFαは、抗T cell receptor α(TCRα)抗体と反応する、分子量62kのポリペプチドであることを認めた。さらに、本ポリペプチドをトリプシン処理後、逆相HPLCで分取したペプチドのアミノ酸配列解析を行った結果、5つのペプチド中、4つがクローン化されたマウスTCRαcDNAから予想されるアミノ酸配列に同一性または相同性を示した。興味あることに、Jα領域に保存されているFGXGTXLモチーフを有するペプチドも確認した。天然型MNSFが熱(56℃,30min)および酸(pH4,30min)処理に安定であるのに対し、MNSFβは不安定であった。これよりTCRαに強い関連性を示すMNSFαサブユニットが、effector分子であるMNSFβの活性の保持に重要であると判断した。MNSFと受容体との結合により細胞質内の65kDa-と31kDa-タンパク質のチロシンリン酸化が起こるが、MNSFαはこのリン酸化を持続させることを観察した。但し、MNSFα自体には全く活性は認められなかった。現在クローニング中のMNSF受容体への結合にMNSFαがどのように寄与するか検討中である。
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