マウスT細胞ハイブリドーマが産生する抗原非特異的サプレッサー因子(MNSF)は、多様な生物活性を示す分子量70Kのサイトカインである。MNSFは免疫抑制作用を持つ分子量8Kのユビキチン類似タンパク質と62Kのアクセサリータンパク質から構成される。本研究により、これまで不明であったアクセサリータンパク質の構造および機能について明らかにした。逆相高速液体クロマトグラフィーにより62K-タンパク質をさらに16Kと46K-タンパク質に分離した。抗TCRαモノクローナル抗体は46K-タンパク質を認識したが、抗TCRβモノクローナル抗体は反応しなかった。これは70K-MNSFの性状と一致する。この抗TCRαモノクローナル抗体に交差性を示す46K-タンパク質に免疫抑制活性は認められなかった。しかしながら、活性サブユニットである8K-ユビキチン類似タンパク質が、標的細胞のマウスヘルパーT細胞株(D10細胞)に誘導する細胞内タンパク質チロシンリン酸化反応を増強することを明らかにした。実際、8K-セビキチン類似タンパク質単独では31Kおよび65K-タンパク質のチロシンリン酸化は10分で減衰するが、46K-タンパク質存在下では約30分間持続した。本46K-タンパク質は熱および酸処理に影響を受けないことより、MNSFの物理化学的安定性に関与しているものと考えられた。一方、16K-タンパク質は、MNSFの細胞内情報伝達機構には無関与であった。
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