研究課題/領域番号 |
13680716
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
櫻庭 春彦 徳島大学, 工学部, 助教授 (90205823)
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研究分担者 |
大島 敏久 徳島大学, 工学部, 教授 (10093345)
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キーワード | 超好熱菌 / Pyrococcus horiloshii / アーキア / NAD生合成 / ゲノム情報 / L-アスパラギン酸オキシダーゼ / X線結晶解析 / NADシンターゼ |
研究概要 |
嫌気性超好熱アーキアPyrococcus horikoshiiのゲノム情報から予想されるアミノ酸配列が大腸菌のL-アスパラギン酸オキシダーゼに高い相同性(35.1%)を示す遺伝子が存在することを見出した。この遺伝子の大腸菌における発現系を構築し、産物の機能解析を行ったところ、本酵素がL-アスパラギン酸オキシダーゼ活性を持つこと、及び90℃まで失活しない高度耐熱性を示すことが明らかになった。これは嫌気性微生物および超好熱菌から見出された最初のオキシダーゼである。機能解析を進めた結果、本酵素が嫌気条件下で酸素の代わりにフマル酸、フェリシアン化カリウムなどを電子受容体とするL-アスパラギン酸脱水素反応を触媒することが明らかとなった。生理的には本反応がL-アスパラギン酸の酸化により生じたFADH_2をFADに再生すると考えられる。本酵素は、P. horikoshiiにおいてNAD生合成の初発酵素として機能すると考えられる。本酵素の結晶化に成功し、現在、X線結晶解析による三次元構造の解析を行っている。一方、本菌のゲノム情報を解析した結果、L-アスパラギン酸オキシダーゼ以外のNAD生合成系の関連酵素であるキノリン酸シンターゼ、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼおよびNADシンターゼのホモログが存在することを見いだした。さらに、その全ての大腸菌における大量発現系の構築に成功した。この中で、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼについては、高温条件下でATPの代わりにADPやAMPをアデニリル供与体として利用できることを見いだしている。ADPやAMPを利用するアデニリルトランスフェラーゼは、本酵素が初めての例であり、新たな応用面の開発に期待が持てる。これらの酵素の安定性は非常に高く、その機能解析は生合成経路の解明に非常に有効である。また、その機能解析は、超好熱アーキアの経路だけでなくヒトを含めた全生物のNAD生合成経路の解明を容易にし、進化面の情報も提供してくれることが期待できる。P. horikoshii以外の微生物では、好熱菌Bacillus stearothermophilusに有用性の高いNADシンターゼを見いだし、遺伝子クローニングに成功している。
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