研究課題
ミトコンドリアプロセシングペプチダーゼ(MPP)に結合したペプチド基質がどのような構造をとるかを蛍光のエネルギー転移法を用いて解析した。この方法では蛍光の消光度を測定することにより蛍光-消光基の間の距離情報も得られる。そこで、蛍光-消光基を導入した合成ペプチドを用いて解析したところ、酵素内部では遠位アミノ酸の位置によらずプローブ間の距離は一定であった。このことは基質の遠位アミノ酸は、延長ペプチドのどの位置にあろうが基質によらずMPP中では一定の場所に存在することを意味した。すなわち、遠位、近位、切断部、およびC-末端部で基質は酵素に強く結合するが、このときの結合構造は基質によらず一定で、これは基質が切断部位付近で折れ曲がっていることから可能となることが示唆された。さらに、酵素中の基質構造を明らかにするために、基質ペプチドのC-末端と酵素との間の蛍光のエネルギー転移を調べた。この結果、切断部を含んだN-末端10残基とC-末端8残基くらいが基質ポケットに埋まっていることが示唆された。基膣認識シグナルを基質前駆体のアミノ酸変異により解析した。前駆体の中にはこれまでに明らかにした認識シグナルを一部しか持っていないものも少なくない。そこで、より強いシグナルに変異させたところ、切断効率が上昇した。このことは、前駆体はすべての認識シグナルを必ずしも持たずに、それらのうちからいくつかを持てばよく、その結果シグナル要因がある基準を越えれば、前駆体がMPPにより基質として認識され、切断を受けることが判明した。
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