哺乳動物では、リポ多糖(LPS)に代表される様々な細菌由来成分、あるいはウイルス由来の成分が、Toll-like receptor(TLR)を介して自然免疫担当細胞を活性化することが明らかにされている。一方、細菌と並んで重要な病原微生物である真菌に対する細胞応答反応については、未だ不明な点が多い。本研究では、TLRによる病原微生物の分子認識と細胞活性化の分子機構の解明を目的に、真菌表層のβ-glucanに着目し、そのマクロファージ活性化能について解析した。 様々なβ-glucanの活性をNF-κBの活性化を指標に検討したところ、直鎖状(1→3)-β-D-glucanであるcurdlanに最も強い活性を認めた。中性の水溶液に不溶のcurdlanは、50-300 mMのNaOHを用いて溶解することによって、その活性が著しく増強された。curdlanは、NF-κBを活性化すると共に、tumor necrosis factor-α、macrophage inflammatory protein-2、inducible nitric-oxide synthaseの発現を誘導した。この活性は、LPSの活性を中和するpolymyxin B処理によって抑制されなかった。一方curdlanの活性は、カブトガニFactor Gのβ-glucan結合ドメインや、短鎖(1→3)-β-D-glucanによって濃度依存的に抑制された。さらに、curdlanに対する細胞応答は、TLR/IL-1受容体に共通するアダプター分子MyD88の変異体の遺伝子導入により抑制された。従って、直鎖状(1→3)-β-D-glucanは、その高次構造に依存してマクロファージ刺激活性をもつことが明らかになり、その受容体は、TLRのようなToll/IL-1 receptor-like(TIR)ドメインを含む膜タンパク質であることが強く示唆された。
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