高等真核生物のゲノムDNAに存在する唯一の生理的修飾塩基であるCpG配列の5-メチルシトシンは、メチルCpG結合タンパク質を介して、遺伝子の転写制御に関与している。メチルCpGの情報が、メチルCpG結合タンパク質を介して、どの様な分子機構によりクロマチンの構造変換を介した遺伝子の発現制御に関与しているのかを解明するため、メチルCpG結合タンパク質ファミリー分子のうちの一つMBD2と相互作用するタンパク質を、酵母ツーハイブリッド法で検索した。その結果、7つのジンクフィンガーモチーフを持つ新規タンパク質MBD2-interacting zinc finger protein(MIZF)をクローニングし、機能解析した。MIZFは、C末端側のジンクフィンガーモチーフによりMBD2およびHDACシステムに結合することで、負の転写調節因子として機能していることが判明した。さらに、MIZFは特異的DNA配列に結合する転写因子であることから、MIZFの機能として、MBD2-Mi-2/NuRD複合体に標的遺伝子特異性を与えている可能性が示唆された。多くのガン関連遺伝子のプロモーター領域ににMIZFの認識サイトがあることが見出され、特に、ガン抑制遺伝子Rbの転写制御にMIZFが関与していることが明らかになった。以上の結果から、MIZF-MBD2-NuRDシステムによる転写制御機構の異常が、ガン発症の分子機構に寄与する可能性が示唆された。
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