研究概要 |
発光細菌P. phosphoreum (Pp)におけるリボフラビン(RF)生合成の亢進と2種の発光細菌における完全なribオペロンの存在:従来、グラム陽性菌ではribオペロンが存在する故、必要に応じてRFを大量に合成できるのに反し、陰性菌では存在せず、RFは構成的に合成されるに過ぎないとされてきた。発光細菌はグラム陰性菌に分類されるが、強発光時には菌体が濃黄色を呈し、RFを大量に合成していると考えられたので、Pp IF013896(強発光菌、親株)を強発光条件下(3%NaCl中)、および弱発光条件下(1%NaCl中)で培養した際の菌体中のRF生産量を比較したところ、前者は後者の約4倍生産していることを確認した。一方、親株と弱発光変異株間でのRF生産量を比較したところ、親株は暗変異株に比べ、約8倍のRFを生産していた。強発光時に大量のRFの合成が可能であるのは発光細菌においてもribオペロンが存在する可能性が高かったのでPpの部分ribDを縮重塩基プライマーを用いてPCR増幅し、PCR産物の配列決定後、同配列の上下流の配列をSUGDAT法により決定して、発光細菌にも完全なribオペロンが存在することを確認した。さらにV. fischeri(Vf)においても同様の手法でribオペロンが存在することを確認した。本結果はRF生合成に関与する遺伝子群の組織化についての従来の概念を覆すものである。 luxオペロン制御遺伝子群のVfおよびPpにおける分布の解析:現在までにおもにV. harveyi(Vh)においてluxオペロン制御遺伝子が系統的に探索されてきた。これらの制御系は広く発光細菌全般に存在すると考えられるので、VfおよびPpにおいてこれらの遺伝子の同定を試みた。前者ではluxM, N, O, P, Q, R2, S,およびpfs,すべての遺伝子が同定できた。しかし、後者ではluxP, Qは存在せず、4,5-dihydroxy-2,3-pentadioneを信号物質とする制御系は存在しないと考えられる。Vfではacylhomoserine lactoneを信号物質とする制御系が2系統存在することとなるが、luxI、R系はPp、Vhには存在せず、本系がVfで機能しているとは考え難い。 PpおよびVfにおけるluxオペロンのゲノム上の存在位置:luxオペロンの上下流に存在する遺伝子は種によって異なっているので、同オペロンのゲノム上の存在位置は固定されていない。しかし、同オペロンのゲノム上の存在位置についての共通性を見出すためにPpおよびVfにおいて同オペロンの上下流に如何なる遺伝子が存在するかを調べた。その結果これらの相同遺伝子の多くはすでにゲノム配列が決定されたVibrio科細菌3種においてChromosome II上に存在していた。同Chromosomeには環境適応に関与する遺伝子が多く存在するので、本結果は私の仮説「luxオペロンの機能は耐塩性フラボドキシンの生合成である」を支持するものである。
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