研究概要 |
本研究は、哺乳類細胞における増殖、分化あるいは細胞死の細胞内シグナル伝達に重要な機能を担うMAPKカスケードの選択的伝達機構とカスケード間のクロストーク機構を解明することを目的として、本年度は、アポトーシスやストレス応答に関与するMAPKカスケードの1つJNKカスケードにおいて、そのキナーゼメンバーと結合し足場となるスカフォールドタンパク質(JSAP1およびJNKBPファミリー)の解析を行ったので以下に記す。 1.マウスJSAP1の解析.JSAP1は細胞への遺伝子導入による一過的発現系において、JNKカスケードのシグナル伝達を正に、ERKカスケードのそれを負に調節している。そこで実際にJSAP1の発現が認められるマウス脳やP19EC細胞において、内在性JSAP1と相互作用している因子を同定するために抗JSAP1抗体を用いた免疫沈降を行った。現在、特異的にJSAP1と共沈する何種類かのタンパク質を精製しプロテオーム解析を行っている。平成14年度にはさらに増殖、分化あるいはアポトーシス刺激に伴うJSAP1複合体の構成員の変化を調べ、それらの情報をもとにMAPKの選択的活性化やカスケード間のクロストークにおける機能解析を行う予定である。 2.マウスJNKBPの解析,JNKおよびp38両カスケードのスカフォールドタンパク質と機能している可能性があるJNKBP1のファミリーメンバー(JNKBP2)の単離を試みた。cDNAクローンの単離、解析からJNKBP2はアミノ酸配列でJNKBP1と50%程度の相同性があり、またそのmRNAは精巣特異的に発現が認められ、発現時期の解析から精子形成に関与する可能性が示唆された。平成14年度には、アポトーシスやストレスの際に流れるJNK、p38カスケードのシグナル伝達におけるJNKBP1とJNKBP2の機能を比較検討する予定である。
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