研究概要 |
線虫C. elegansが持つすべてのプロテアーゼおよびプロテアーゼインヒビター様遺伝子を標的に,RNAiによる機能検索を行った.現在までに約190の遺伝子についてRNAiを行い,致死,不妊,生殖巣の形成異常,成長の遅延,形態の異常,脱皮の異常などを見出している. ユビキチン特異的プロテアーゼの中で,F38B7.5はRNAiによりF2世代で胚致死となる.この分子はこのプロテアーゼファミリーの中でも線虫に特有の一次構造を持った分子であるが,にもかかわらず必須性を示す点が興味深い.このタンパク質に対する抗体を作製したところ,貯精嚢に染色が見られた.このことはRNAiの影響がF2世代になって現れることと関連していると思われる.また,哺乳類のUCHファミリーに相同性を持つ分子群について,RNAiによって弱い胚致死が見られた.このうちUCHL1に相同性のある分子はGFP発現実験により一部の神経細胞に発現していることが見られた.UCHL1が神経障害に関係していると言われていることと合わせて重要性が感じられる. 金属プロテアーゼM12Aファミリーからは脱皮に関わる分子を見つけた.この分子はGFP発現実験により下皮に発現していることが示唆された.下皮より分泌されて,古いcuticleを脱離するときのタンパク質分解に関与すると考えられる.また,この分子はプロテアーゼドメインの他にCUBドメインとTSP1ドメインという哺乳類でよく見られる.ドメインにより構成されているが,分子全体のドメイン構成は現在までのところ線虫類からしか見出されない.CUBドメインやTSP1ドメインの役割という観点からも重要な研究対象となると考えられる.
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