研究概要 |
前年度までの知見をもとにマウス由来のRhoキナーゼのキナーゼドメイン(一部コイルドコイル領域を含む)はSf9細胞を利用したバキュロウイルスの発現系を用いてタンパク質の調整を行った。これまでに検索した条件よりさらに広範な結晶化条件を探索した。具体的には強酸性から強アルカリ性にいたる広いpH、低分子量から高分子量にいたるポリエチレングリコールやその他の沈殿剤を用いた。さらに温度も室温(20℃)以外に4℃もためしてみた。現在までのところ結晶は得られていない。現在のコンストラクトは前述のようにキナーゼドメインに加えコイルドコイルドメインがあるので、コイルドコイル領域を短くしたり削るなどした別のコンストラクトの調整が必要であると思われる。一方Rhoシグナリングと深く関わるERMタンパク質については、ICAM-2由来の細胞内領域のペプチドとの複合体構造の解析に成功した。さらにペプチド側のアミノ酸を変えることによる結合定数の変化を定量的に測定するためビアコアを用いた実験を行い、立体構造解析によって判明した種々の相互作用と様々な変異体実験がよく合致することを証明し立体構造の観点から認識機構を考察した(EMBO J.,2002)。 またERMタンパク質と同様FERMドメインをもつがん抑制遺伝子産物Merlinの構造を決定し、臨床的に蓄積されていた様々な変異に関して、どうして変異により機能を損失するのかを立体構造の観点から考察した。
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