研究概要 |
熱測定による研究:N端の触媒ドメイン(GSd,110kDa)とC端のデキストラン結合ドメイン(DXBd,58kDa)から構成されいているグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)におけるドメイン間相互作用を熱力学的に解析するために,GTFのN端85残基を欠損したGS-6R, GSdをC端にDXBdをN端に入れ替えた6R-GS, GSdが単独で発現したGSの3種類のタンパク質について,示差操作熱量計(DSC)により熱変性に伴う熱容量変化を測定した.その結果,6R-GSは40℃付近と55℃付近にピークを示した.高温側のピーク位置とその大きさはGSとよく一致した.これに対して,GS-6Rは50℃付近にピーク,55℃付近に肩を示した.これらのことから,6R-GSはドメインの独立性が高く,温度上昇につれDXBd, GSdの順に変性すると考えられる.一方,GS-6Rではドメイン間の相互作用が強く,DXBdは安定化され,GSdの不安定化されるが,分子全体としては6R-GSに比べ熱安定性が高くなっていることが示唆される. 誘電分散測定による研究:この研究には,GTFのN端85残基およびC端約C端約260残基を欠くGTF',C端グルカン結合ドメインを完全欠損したGS, GTF'からGSドメインを除去した4Rを用いた.誘電分散測定の結果,水和量は,それぞれ4710,3000,660と算出された.これらの結果から,GSドメインとデキストラン結合ドメインが融合すると,タンパク質全体として,水和量の増加するような構造変化が起こっていると推定される. 総括:熱測定と誘電分散測定の結果を合わせると,タンパク質を構成するドメインは相互作用によって,それぞれの高次構造は維持されるが,各ドメインのエンタルピーレベルの変化と溶媒分子との相互作用に影響を与える構造変化が共役して引き起こされていると推定される.
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