研究概要 |
獲得免疫を持った高等動物のプロテアソームは28個のサブユニットから成る多機能蛋白質分解酵素複合体である。単に蛋白質を分解するだけではなく、内在性抗原を正確に選別し、抗原ペプチドを生成して抗原提示を担う免疫応答系超分子システムである。本研究では我々がSPring-8放射光実験で得た牛肝臓20Sプロテアソームの2.5Å分解能での立体構造にもとづいた超分子複合体としての蛋白分解機構と、抗原提示のための蛋白選別機構を能力を、結晶構造解析から考察する。また、これと比較して脾臓から抽出した免疫型20Sプロテアソームの構造解析にも着手する。 牛肝臓から抽出したプロテアソームの結晶化を行い、SPring-8大型放射光施設で回折実験を行った。2.5Å分解能でのモデルを構築した結果、高等動物のプロテアソームに特有と見られる粒子内の塩基性アミノ酸残基の分布などが見られた。また構成型プロテアソームと免疫型プロテアソームのサブユニットの違い、あるいは保存されているサブユニットと活性機構の関連などを明らかにし考察した(M.Unno, J.B.(2002))。これとともにプロテアソームが細胞核内に移行されるときのシグナル(NLS)の分子表面および分子中での存在箇所を明らかにし、核内移行に対する疑問点を考察した(M.Unno, Structure, (2002))。現在この立体構造モデルをもとに粒子内空洞に存在する活性部位の反応機構をコンピュータグラフィックスにより考察している。これとともに抗原ペプチドを切り出す時の長さの決定機構について分子内部の距離情報を元に考察している。また活性阻害剤との複合体および牛脾臓からの免疫型プロテアソームの結晶化を行っている。
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