研究概要 |
大腸菌転写終結因子Rhoは単一のサブユニットからなる環状6量体の構造を持ち,ATPの加水分解のエネルギーを利用しながら新生RNA鎖を鋳型DNAから解離させるヘリカーゼとしての機能を果たす.本研究では、Rhoがアミノ酸配列上F_1-ATPaseと相同であることに着目し、両者の間の構造的・機能的関連をさらに掘り下げるべく解析を進めた. 我々のこれまでの研究により、Rho6量体は基本的には6回転対称構造に分類されるが、より厳密には3回転対称に近く、各サブユニットが交互に少しずつ異なるコンフォメーション・機能状態をとりながら配置していることが示唆されている.そこで、今回は、3回転対称構造を裏付けるより直接的な証拠を得るために、化学架橋剤によるクロスリンクパターンの詳細な解析を行った.Rhoポリペプチドはヒドロキシラミン処理により151-152番残基間の一ケ所で特異的に2分割されることが分かっていることを利用して、架橋産物をヒドロキシラミン分解した後SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけて分析した.その結果、どのサブユニット間境界においても切断点よりN末端側のリジン残基から、C末端側のリジン残基へとクロスリンクが架っており、N末端側どうしあるいはC末端側どうしでのクロスリンクは皆無であることが分かった.他方、F1-ATPaseの結晶構造に基づいてRho6量体の立体構造をモデル化してみると、Lys123が隣接サブユニットのLys224およびLys249に対して数Å内外の距離に位置しており、これらの残基間でクロスリンクが可能であることが示唆された.それ以外には架橋可能とおもわれる部位は見当たらなかった.従って、Lys123->Lys224とLys123->Lys249という2通りのクロスリンクが交互に起こっているものと推測され、3回転対称モデルを支持する結果となった.
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