研究概要 |
大腸菌転写終結因子Rhoは単一のサブユニットからなる環状6量体の構造を持ち,ATPの加水分解のエネルギーを利用しながら新生RNA鎖を鋳型DNAから解離させるヘリカーゼとしての機能を果たす.本研究では、Rhoがアミノ酸配列上F1ATPaseと相同であることに着目し,両者の間の構造機能連関をさらに掘り下げるべく解析を進めた.具体的には、6量体の空間配置および立体構造の解明に焦点を絞り以下の結果を得た。 1.先に我々は、化学架橋剤によるクロスリンク解析を通じて、Rho6量体は基本的に6回転対称構造に分類されるが、厳密には各サブユニットのコンフォメーションが交互に少しずつ異なる偽3回転対称配置をとっていることを示した.今回、クロスリンクの位置をヒドロキシラミン分解法によりマップしたところ、全てのサブユニット間境界において切断点の151番残基よりもN末端側のリジン残基から、C末端側のリジン残基へと架橋されていることが分かった.他方、F1-ATPaseに倣ってRho6量体の立体構造モデルを構築したところ、N末端側のLys123とC末端側のLys224あるいはLys249とが、隣接サブユニット間で相互にクロスリンク可能な位置に在ることが示唆され、偽3回転対称モデルの妥当性が裏付けられた. 2.並行的に、X線結晶解析によりRhoの精密な立体構造を決定する試みを三木邦夫博士のグループ(京大理・化)と共同して進めた.Rhoは結晶性が劣るため当初試行は困難を極めたが、動的光散乱法を利用して会合体が単分散性を採り易い溶媒条件を探索した結果、かなりの改善が見られ解像度約10Åまでの回折像を得ることがでた.さらに、ATPアナログあるいはオリゴDNAなどのリガンドを添加することによっても単分散性が向上することが判明したため、これらを含む共結晶の作成を試みつつある.
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