研究概要 |
ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair : NER)にはゲノム全般で働くGlobal genome repairと転写と共役したTranscription-coupled repair(TC-NER)の2つのサブ機構がある。TC-NERはコケイン症候群の原因遺伝子産物CSA, CSBと転写複合体が修復複合体と相互作用していると考えられているが、その分子機構は不明である。新規蛋白質XAB2はXPA, CSA, CSB・RNAポリメラーゼII複合体と相互作用し、転写とTC-NERの両機構に関与していることが示唆されている。FLAG tagged-XAB2をHeLa細胞で発現させ、抗FLAG抗体を用いた精製でXAB2は約20種の蛋白質と共に精製された。この分画をゲル濾過、miniQを用いてさらに精製すると、XAB2は5種の蛋白質と同一画分に精製されることから、これら5種の蛋白質(p160,p57,p50,p42,p35)はXAB2と強固な複合体を細胞内で形成していると考えられる。p35はRNA結合ドメインを持つpeptidyl prolyl cis-trans isomerase(PPIE)で、XAB2と直接結合することがわかった。p35の各種欠失変異体を用いた解析の結果、p35のRNA結合ドメインがXAB2との結合に必要であること判明した。精製XAB2複合体を、RNAポリメラーゼIIによるin vitro転写系に加えると転写伸長反応を促進する効果がみられた。このことは、抗XAB2抗体の細胞内マイクロインジェクションがTC-NER及びRNAの転写を阻害すること一致する。これまでに、遺伝子ターゲティング法を用いてXAB2完全欠損マウスの作成を行い、XAB2が生存に必須であることを示した。現在、条件致死XAB2変異体の作成を行っている。
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