研究概要 |
イントロンを含む前駆体tRNAのスプライシングは酵素的な切断と連結反応によって行なわれる。切断に関わるtRNAスプライシング・エンドヌクレアーゼは古細菌から高等植物まで広く分布し、触媒ドメインに高い相同性が見られる。すでにアラビドプシスからエンドヌクレアーゼを構成すると推定されるサブユニット遺伝子(AtSen1,AtSen2)を単離して、その分子解析を行なった。 最終年度である本年度では生体内でのこれらAtSen蛋白質の機能(切断活性を有するかどうか)を明らかにするために、イントロンを含むtRNAである、アンバーサプレッサーtRNA^<Met>の機能発現を通じて調べた。 アラニンtRNAのアイデンティティー・エレメント(G3::U70)を導入したアンバーサプレッサーtRNA^<Met>はアラニンを受容することをin vitroで確かめた。また、pre-matureなアンバーコドンを導入したβ-グルクロニダーゼ遺伝子(GUS/amber)は植物細胞内に組み込んでも酵素活性が検出されないことを確かめた。サブユニット遺伝子(AtSen1,AtSen2)の触媒三つ組残基のヒスチジンコドンをアラニンコドンに置換した変異遺伝子を構築し、これらを過剰発現する形質転換アラビドブシスを作出した。これらの幼植物体の胚軸由来のカルスを標的組織として、上記アンバーサプレッサーtRNA^<Met>遺伝子とGUS/amber遺伝子をアグロバクテリウムを介してカルス細胞に同時に導入し、一過性の発現を調べた。この結果、変異AtSen2導入植物をバックグラウンドとしたときにはGUS活性が検出されたのに対して、変異AtSen1導入植物ではGUS活性が検出されなかった。このことから、少なくともAtSen1はtRNAスプライシングに関与する触媒サブユニットをコードすることが明らかとなった。これと同時に本研究で開発したアンバーサプレッサーtRNAとGUS/amberの共発現系は、tRNAスプライシングを始めとしたtRNAの機能発現を様々な角度から解明する上で有効な実験系であることが確かめられた。
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