研究概要 |
前年度までに見出した,ウイルス非感染時から微量に産生されているIFN-α/βによる"弱いシグナル"の生体防御システムにおける役割について,これをさらに発展させ,シグナル伝達とがん化の制御機構という観点より,このIFN-α/βによる"弱いシグナル"の細胞の癌化制御機構における役割について検討した.その結果,IFN-α/β受容体(IFNAR1)遺伝子欠損マウス由来の胎仔線維芽細胞(MEF)細胞を長期培養していると,一部の細胞がトランスフォーメーションを起こすという現象や,活性化型ras遺伝子の導入によってIFNAR1欠損MEFはヌードマウスに対し,造腫瘍性を示すということを見出している.また,IFN-β遺伝子欠損MEFの場合では,IFN-α/β受容体欠損MEFと同様にトランスフォーメーションを起こすという結果を得ている.さらにIFNAR1遺伝子欠損マウスがDMBA(7,12-dimethylbenz[a]anthracene)による化学発がんの実験系において野生型マウスの場合と比較して高率にpapillomaを形成するという結果も得られている.また,各種ヒトの癌患者由来の組織でのIFN-α、IFN-β、IFNAR1、IFNAR2の遺伝子発現についてRT-PCR法を用いて、検討したところ,ある種の癌では,非癌部と比較して,癌部においてとくにIFNAR1 mRNAの発現が低い傾向を示しているという結果も得られた.今後,IFN-α/βによる"弱いシグナル"の癌化の抑制機構について分子レベルでの検討を進める予定である.
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