本研究代表者らは、GM-CSFがNKT細胞に対して与える影響についての知見を得るため、ヒトGM-CSFレセプターを全身に発現するトランスジェニックマウスを用いて解析を行ってきた。GM-CSFは、NKT細胞に対してTCRα鎖ゲノムの組み換えを誘導する分化(成熟)誘導因子であることが、千葉大学の谷口らによりすでに報告されている。しかし本研究代表者らは、昨年度、このトランスジェニックマウスにヒトのGM-CSFを投与した場合、NKT細胞の存在比率に顕著な変化を伴わずに、全脾臓細胞の絶対数の増加することを見い出した。これは、GM-CSFがその他の血球系細胞の場合と同様、NKT細胞(あるいはその前駆細胞)に対しても増殖誘導因子として作用しうることを示している。GM-CSFによるNKT細胞の分化誘導は、脾臓以外にも胸腺、骨髄等のNKT細胞成熟の場において確認されているが、今回我々はこれらの臓器においても投与したGM-CSF依存的にNKT細胞の絶対数が増加していることを見い出し、GM-CSFが脾臓の環境下のみならず、様々な場においてNKT細胞の成熟状態と同時にその数をも調節しうることが明かとなった。現在我々は、GM-CSFによるNKT細胞の増殖および分化を誘導するメカニズムについて分子レベルで明らかにするため、TCRβ8.2/ヒトGM-CSFレセプターのダブルトランスジェニックマウスからNKT細胞の前駆体を単離し、GM-CSFによるNKT細胞の分化誘導機構に関してin vitro培養系を用いた解析を行っている。さらに、我々がこれまでに得てきた知見を元に、細胞の増殖誘導に関与するGM-CSFレセプター変異体やシグナル伝達分子を発現するES細胞を用いてキメラマウスを作製し、NKT細胞の増殖や分化に影響をおよぼす分子の探索も行っている。
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