研究概要 |
未受精卵の細胞周期を停止させるMAPKの下流は脊椎動物ではp90RskがMAPKにより活性化され、p90Rskはさらにその下流のBub1をリン酸化し、スピンドルチェックポイントを活性化して減数分裂を第二分裂中期に停止させるとされている。ヒトデの未受精卵のG1期停止にはMAPKの下流でp90Rskが機能していることは、p90Rskにたいする抗体を未受精卵に微小注射することにより、DNA複製が開始することから明らかとなった。しかし、ヒトデの場合にはG1期に停止するので、p90Rskの下流は分裂中期に停止させる機能をもつスピンドルチェックポイントの複合体に接続されているとは考えられない。では、ヒトデではどのようなところにp90Rskのシグナルが接続されると予測されるのか?ヒトデの未受精卵はG1期に停止している。このG1期というのは、酵母の"Start"や哺乳類の培養細胞の「制限点」とは異なり、G1期の中でもDNA複製開始に非常に近い段階である。それは、このG1期停止の段階を調べるために、Cdk2,Cdc7,Cdc45,PCNA, MCMなどの多数の複製開始にかかわる分子をクローニングしてその抗体を作成し、ヒトデのG1期に停止している未受精卵のクロマチンにどのような蛋白質が結合しているのかを調べた。その結果、未受精卵の状態でもすでにMCMはクロマチンに結合しており、受精後約25分でCdc45がクロマチンに移行し、約30分でPCNAが現れ、これとほぼ同時にBrdUの取り込みが見られることからDNA複製が開始したと判断できる。この結果からヒトデの未受精卵のG1期停止はPreRCをすでに形成しているが、Cdc45はクロマチンに移行していない状態、すなわちPreIC形成の手前でDNA複製を停止していることが明らかとなった。
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