研究概要 |
我々は,c-Ablファミリーの一員で機能が明らかではないArg(Abl related gene)について,そのノックアウト細胞がATMノックアウト細胞と同じように,Rad51 focus形成,放射線感受性,DNA組み換えや修復,等の異常を示し,さらに,ATM依存的に活性化されたArgがRad51と結合して燐酸化することから,ATMのDNA修復機能にArgが関与していることを明らかにした.今後,ATMがどのようにArgを活性化し,Argが燐酸化したRad51がどのように機能するのか,共同研究により生化学的解析を進める.また,ATM/ATRによって燐酸化されると同時に,DNA損傷のセンサーとして機能しているPCNA様のRad9およびRFC様のRad17のノックアウト細胞を作成し,その解析を行った.その結果,その機能は予想されるATRの機能と一致し,ATMの機能とは異なると考えられた.さらに,Rad9がTopBP1とは結合できるが,Polymerase δ,ε,ηとは結合していない予備的結果を得ている(東大分生研鶴尾教授および阪大花岡教授との共同研究,未発表).TopBP1に相当する酵母のDpb11はpolymerase εと相互作用することから,Rad17-9はTopBP1を介して損傷部位にpolymeraseを動員している可能性が考えられる.我々は今後この重要な仮説を検証するため,TopBP1のノックアウト細胞を作成して解析するとともに,様々なノックアウト細胞におけるpolymerase δ,ε,ηの動態を,BrdU, Rad9,TopBP1 focusとともに,抗体(現在作成中)を用いて解析する.
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