研究概要 |
本年度は、まずJNK MAPキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路における足場タンパク質JSAP1, JNKBP1のファミリーメンバーのスクリーニングを行った。その結果、それぞれのファミリーメンバーと考えられるcDNAクローンの単離に成功した(JSAP2, JNKBP2と命名)。塩基配列の解析から、JSAP2およびJNKBP2は、それぞれ1322および1521アミノ酸残基から成る新規タンパク質であることが明らかになった。さらに、MAPK(JNK, p38, ERK)に対するJSAP2, JNKBP2の結合性を免疫沈降・ウェスターンブロット法により検討したところ、JSAP2-JNKあるいはJNKBP2-JNKの特異的な相互作用が認められた。以上の結果から、JSAP2, JNKBP2はJSAP1, JNKBP1と同様にJNK MAPKカスケードにおける足場タンパク質として機能していると考えられる。 足場タンパク質JSAP1のin vivoにおける機能を調べるため、JSAP1ノックアウトマウスES細胞の作製を行った。JSAP1(-/-)ES細胞の増殖は野生型に比べて有意に遅く、また胚様体を形成させた場合、JSAP1(-/-)由来の胚様体はサイズが約1/2になることが判明した。さらにJNKの活性について調べたところ、JSAP1をノックアウトした細胞では、その活性が有意に現象し、JSAP1はJNKの活性化あるいは安定性に関与していることが強く示唆された。またES細胞の文化系を用いて検討したところ、JSAP1は中胚葉形成において重要な役割を担っていることが示唆された。
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