研究概要 |
概日リズムは地球上の殆どの生物に観察される重要な時間統御システムと考えられており,その分子機構を探るためにシアノバクテリアを用いて研究を行っている。本研究課題では,概日リズムの中核を担う蛋白質KaiCのリン酸化を中心に,概日リズムにおけるリン酸化制御の解析を目的としている。平成13年度の研究経過は以下の通りである。 1.KaiC蛋白質の自己リン酸化の解析 KaiCの自己リン酸化を詳細に解析するため,従来のGST融合蛋白質だけでなく非融合型KaiC蛋白質の大腸菌による合成・精製法を確立した。この蛋白質を用い,KaiAによるKaiC自己リン酸化活性化を追試した。また,二次元薄層電気泳動法を用い,KaiCの自己リン酸化はスレオニン残基とセリン残基でおこることを明らかにした。 2.細胞内におけるKaiCのリン酸化に関する解析 KaiCはin vivoでもリン酸化し,その活性に概日リズムが認められる。KaiCの432番目のスレオニンをアラニンに置換すると,in vivoおよびin vitroのリン酸化能が半減するとともに,形質転換体は無周期化した。この変異株は今後の様々な解析に有用と期待される。 3.ゲノム情報を用いたリン酸化関連蛋白質の時計への影響 ヒスチジンキナーゼ(HK),セリン/スレオニンキナーゼ/ホスファターゼの遺伝子破壊株を用いて,概日リズムの発現パターンを観察した結果,数種類のHK,セリン・スレオニンホスファターゼ遺伝子破壊株において概日リズム異常が見られた。現在これらの表現型を詳細に解析している。
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