我々は、テトラサイクリン遺伝子制御システムを利用したコンデショナルノックアウト法にて、姉妹染色分体の接合に関わるコヒーシン複合体の構成分子であるRad21-/-欠損細胞をニワトリBリンパ細胞株DT40にて樹立した。テトラサイクリンによりRAD21トランスジーンの発現をおさえると、細胞内Rad21の減少にともない、RAD21-/-DT40は細胞周期のM期に集積した。M期にとどまっている細胞の染色体を分析すると、姉妹染色分体はお互いに近接していたが、分体間の距離は野生型に比べると全長にわたって大きく解離していた。姉妹染色分体交換(SCE)の頻度を測定すると、野生型にくらべてその頻度は減少しており、一部染色体の断裂も観察された。また、分裂期の染色体を詳細に観察すると、分裂期プレートに整列しない染色体や、分裂した染色体間に取り残される染色体などが多数出現し、動原体の機能不全を示す所見が多数得られた。また興味深いことに、細胞分裂期に染色体と細胞質分裂の調節に同時にかかわるINCENP蛋白質の局在に変化をきたしていた。このように、高等真核細胞のRad21は、姉妹染色分体の接合を介して染色分体間の組換え修復に重要な役割をになっている一方で、姉妹染色分体の正常な分配による染色体安定性と正常な細胞周期の進行にも重要な役割をしていることが示唆された。
|