今回我々は、これらのRap1の機能に関わるエフェクタ分子を同定するためにRap1と相互作用する分子の単離を行った結果、活性型Rap1と結合するP30をクローニングした。P30は分子量30Kdのタンパクで、その構造の特徴は分子中央にRas/Rap結合ドメイン(RBD)を持っていた。また、P30タンパクの発現は血球系細胞株に広く認められた。Rap1とP30の会合についてはin vitro系においてGTP依存的に会合した。次にP30が細胞の接着性や細胞遊走能を促進するかどうかを検定する為、ヒトLFA-1を再構築したプロB細胞株BAF細胞(LFA-1/BAF)にP30を過剰発現させ、ICAM-1をコートしたディシュ上で接着性、細胞運動性を解析した。活性型Rap1を導入したLFA-1/BAFにP30を発現させると、単位時間当たりの移動距離が親株と比べて顕著に増加した。また、P30のみを発現させたLFA-1/BAFをRap1の活性化を引き起こすSDF-1で刺激した時にも親株と比べてLFA-1依存性の細胞遊走の上昇が観察された。さらにP30のRBDに変異を入れ、Rap1と会合しないP30の変異体を発現させると細胞遊走の上昇は起きなかった。P30の細胞内での発現を免疫染色で調べると細胞質に点状に染まり、核近傍のゴルジ体/MTOCに集積像が見られた。また、活性型Rap1とp30を導入したBAF細胞では著しいマイクロチューブルの発達が観察された。以上の結果より、p30はRap1の機能のうちインテグリン依存性の細胞遊走能促進に関与していること。そして、その細胞遊走能亢進はマイクロチューブルを介するメカニズムであることが示唆された。さらに現在、p30の機能発現に重要な領域やメカニズムの解析を進めている。
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