成長極性と細胞増殖(分化・細胞周期)は厳密に連携制御されている。本研究では、分裂あるいは出芽によって増殖する酵母を使って、成長極性を関知・制御するチェックポイント機構の解明を目指した。 1.分裂酵母において、ヒトのPP2AのB'補助因子のホモログを同定し、B'補助因子が、カルシニユーリンと機能的に相互作用し、M期制御を含む広範な細胞増殖制御に関与することが示唆された。 2.分裂酵母において進化上保存されたWDタンパク質Wat1/Pop3を同定し、機能解析の結果、微小管の強度調節をとおし染色体の安定性と、mRNA成熟機構に重要であることが示唆された。 3.出芽酵母においてG1期進行阻害剤・リベロマイシンAの細胞分子標的が、Isoleucyl-tRNA Synthetaseであることを分子遺伝学的解析により示した。 4.分裂酵母の高温感受性の成長極性異常変異体mor2の解析から、原因遺伝子にコードされる新規タンパク質Mor2が、成長極性の維持と確立に重要であることを見い出した。mor2変異体では、細胞質微小管末端因子CLIP-170様タンパク質Tip1が細胞内に分散することから、Mor2は、細胞端の領域を限定するのに重要であることが示唆された。さらに、mor2変異は、高温で細胞周期G2期遅延を誘導し、その際、Wee1キナーゼが重要であることがわかった。 5.主要な二つの情報伝達経路、Ca^<2+>情報伝達経路とHOG経路が、細胞増殖(出芽機構とM期開始)を拮抗的に制御すること見いだした。具体的には、Calcineurinが、出芽に先立つアクチン極性化とSwe1キナーゼの活性化を介しM期開始を阻害し、一方、HOG経路が、アクチン極性化後の出芽機構を活性化することによりM期開始を促進することを見いだした。
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