今までの我々の結果から、培養細胞においては染色体凝縮がMPFによるのではなくむしろサイクリンA/cdk2であること、また、MPFの活性化にもサイクリンA(or E)/Cdk2が必要であることが強く示唆された。カエル卵においても、MPFの活性化・染色体の凝縮にサイクリンA/Cdk2(orサイクリンE/CDK2)が必要かどうかを、そのインヒビターであるP21(cip)タンパク質をカエルの2細胞期の両割球に注入し調べた。p21(Cip)をサイクリンA(or E)/Cdk2のみを阻害する濃度になるように受精卵に注入すると、細胞分裂は停止した。そして、この分裂阻害効果はp21(Cip)濃度に依存的であった。この時、生化学的にMPFの活性を調べると活性化していなかった。これらの結果から、初期胚において、in vivoにおいてもサイクリンA(or E)/Cdk2の活性が、MPFの活性化に必要であることが示唆された。また、中心体の複製サイクリンA/Cdk2(orサイクリンE/CDK2)が必要とされているが、今回、中心体の複製・分離にサイクリンB2が関与する事を見い出した。サイクリンB2のN末をアフリカツメガエルの卵母細胞に過剰発現させると第一減数分裂時に正常な紡錘体が形成されず単極の紡錘体が形成された。これはサイクリンB1のN末を過剰発現させた時には観察されず、サイクリンB2に特異的であった。さらにサイクリンB2のN末の欠失突然変異を用いた実験から、サイクリンB2のN末115番目から121番目の7アミノ酸が正常な紡錘体形成に必要である事を見い出した。中心体複製にはサイクリンA/cdk2が関与する事を考えると、中心体の分離にもサイクリンA/Cdk2がモータータンパク質やサイクリンB2のリン酸化を介して関与している可能性が示唆された。
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