研究概要 |
本研究では、hsc70と協調して働くDnaJホモログdj2、dj3の役割を個体レベルで解明するため、ノックアウトマウスの作成を行った。また、申請者らのグループが解析を進めているTom34についてもノックアウトマウスの作成を行った。 Tom34ゲノムは非常に似通った2つのエクソンが近接し、共に第一エクソン(exon 1a、1bと呼ぶ)として機能していた。臓器特異性の検討から、exon 1aは普遍的に発現し、exon 1bは雄性生殖細胞特異的に発現していた。ホモ体ノックアウトマウスは予想通りの割合で出生し、みかけ上の異常は認められなかった。精巣における異常も認められず、雌雄ホモ体で系統維持が可能であった。さらに、ホモ体と野生型からミトコンドリアを単離し、オルニチントランスカルバミラーゼ前駆体の輸送実験を行ったが、有意差を見出すに至らなかった(Terada, K. et al., in press)。 dj2はホモ体の割合が予想より若干低かったが、dj3は出生したホモ体の半数が24時間後までに死亡した。dj2の雄ホモ体、dj3の雌雄ホモ体は同腹のヘテロ体、野生型に対して体重が5-10%少なく、若干の成長遅延が認められた。交配実験からdj2、dj3の両雄ホモ体は生殖能異常が見出された。dj2のホモ体の精巣はヘテロ体、野生型に対して40-70%の重量であった。Dj3ホモ体の精巣はより大きな障害を受けており、重量は30-50%であった。組織学的所見から両ホモ体の精細胞に高頻度のアポトーシスが起きていた。RT-PCR法により精細胞の分化段階に固有の遺伝子発現に低下が見られた。これらの障害機構を検索するため、GFPトランスジェニックマウスの精原細胞の移植実験を行った。その結果、dj2は精子形成支持細胞の障害が、dj3は精細胞自身の障害が、精細胞の分化成熟に影響を与えていることが示唆された。
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