オルガネラ間のタンパク質輸送はコートタンパク質で覆われた小胞によって媒介されている。COP II小胞は小胞体から出芽する輸送小胞であり、タンパク質を小胞体とゴルジ体の間に存在する中間コンパートメントまで輸送する。申請者らは、COP IIコートタンパク質の成分であるSec23pと結合し、リパーゼ構造を持つタンパク質p125を発見した。p125の中央およびC末端部分の配列は、ホスファチジン酸に選択性の高いホスホリパーゼA1(PA-PLA1)と相同性を有する。さらに申請者らはp125、PA-PLA1と構造類似性を示す新規タンパク質KIAA0725pを見い出した。 本年度はp125およびKIAA0725pの酵素活性について解析した。その結果、KIAA0725pがホスファチジン酸に対して選択性を有するホスホリパーゼA1であること、ホスホリパーゼA2活性およびリパーゼ活性は持たないことが明らかとなった。またKIAA0725pの541番目のセリン残基が活性に必須であることがわかった。同条件下でp125のホスホリパーゼA1活性は検出されなかった。さらにp125およびKIAA0725pを過剰発現したときの細胞への影響を比較した。P125を培養細胞で過剰発現させると繋留タンパク質(輸送小胞の膜への繋ぎ止めに働くタンパク質)であるGM130、p115と凝集体を形成する。KIAA0725pを過剰発現させてもGM130、p115との凝集体は形成されなかった。またKIAA0725pを過剰発現させた細胞では小胞体の形態変化がみられ、これはKIAA0725pの酵素活性に依存していた。これらの結果はp125とKIAA0725pが細胞内で異なる局在と機能を有する可能性を示す。
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