イトミミズ胚における中胚葉決定因子の分子性状を明らかにすることを目的として、中胚葉前駆細胞(4d細胞およびM細胞)に特異的に隔離される母性mRNAの検索を行った。正常胚(20細胞期)および4d除去胚から抽出・精製したpoly(A)+RNAをそれぞれ出発材料として、サブトラクションを行った。得られたPCR増幅産物をプローブとして、1細胞期胚のcDNAライブラリーをスクリーニングしたところ、15個のcDNAクローンが陽性反応を示した。これらのクローンについてdigoxigenin標識のRNAプローブをつくり、in situハイブリダイゼイションにより、発現パターンを調べたところ、いずれもpole plasmに局在し、初期卵割期には2d、4dにその存在が確認された。現在までのところ、4dのみに発現するクローンは得られていない。前記15クローンから任意に2つのクローンを選び、RNAiを行った。現在までのところ、端細胞形成や、胚帯形成、のう胚形成に異常が出るケースは得られていない。 これらと併行して、vasa関連遺伝子の単離を行った。p68-classとvasa-classのDEAD-box family RNA helicase遺伝子のイトミミズホモログが単離された。両者ともmRNAは1細胞期から存在し、胚帯形成が進んだ時期には、中胚葉に特異的に発現していた。vasa classについては更に中胚葉胚帯に存在する大型の細胞3個が発現していることがわかった。
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