研究概要 |
イトミミズ(Tubifex tubifex)胚における中胚葉決定因子の分子性状を明らかにすることを目的として、中胚葉前駆細胞(4d細胞およびM細胞)に特異的に隔離される母性mRNAの検索を行った。2d細胞および4d細胞から抽出・精製したPoly(A)+RNAを出発材料に、ビオチン標識cDNAを作製して、サブトラクシヨンを行った。サブトラクション・ライブラリーのスクリーニングおよびサブトラクション産物をプローブとして1細胞期胚cDNAライブラリーのスクリーニングを行ったところ,16個の遺伝子が得られた.それらの中にはImpact,HMGB,Nucleolin,TERE1,ELAVやRNA結合タンパク質などがふくまれていた。これらの遺伝子について、whole-mount in situハイブリダイゼーションを行ったところ,ほとんどのプローブではpole plasmの分配様式と同じようなシグナルの分布パターンが得られた。つまり、これらのtranscriptsはいずれも、4dだけでなく2d細胞にも検出された。これらのサブトラクションと併行して、他の動物で知られる発生遺伝子(dosal,decapentaplegic,hairy,caudal,vasa)のイトミミズホモログの単離を行い、その空間的発現パターンを調べた。Zygoticに発現するcaudal以外は、transcriptsが1細胞期から存在していたが、卵割期での隔離パターンは上記サブトラクション由来の遺伝子と同様に4dあるいは2d細胞に限定されるものではなく、両細胞に分布するものであった。以上の結果から、イトミミズでは、母性mRNAは多かれ少なかれPole plasmと挙動をともにするものと考えられる。したがって、2dあるいは4d細胞に局限されるような母性mRNAの存在の可能性は低い。
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