ウニプルテウス幼生頂部神経節の主要な構成神経細胞のセロトニン細胞で発現されているトリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)遺伝子の分離に成功し、その全塩基配列の70〜80%の解読に成功した。この塩基配列を基にプローブを作製し、in situ hybridizationからこの遺伝子発現部域が頂部神経節上皮組織中に局限されていることを観察した。初期発生過程中にこの遺伝子が頂部神経節予定部域以外に発現することはない。また、ノーザンブロッティングから、免疫組織化学観察と一致して、この遺伝子は後期原腸胚から発現する。一方、頂部神経節においてセロトニン細胞とTPH遺伝子発現細胞が完全には一致しない問題に対して、現在大腸菌にTPH遺伝子の一部をGSTと結合したfusion proteinの形でTHP蛋白の断片を発現させることに成功したので、マウスに免疫して抗体を作製している。免疫組織化学によって上記の回答を得る予定である。また、セロトニン細胞が幼生中軸に向かった指向性の高い神経繊維伸長を解明する研究は現在in vitroでセロトニン細胞分化に成功した。さらに、この条件で神経繊維が伸長してくることが分かったので、現在これが伸長する方向を決める因子の解明に向けた実験を始めている。セロトニン受容体の分布については、セロトニン受容体蛋白の遺伝子断片をウニ幼生から分離し、これに対するペプチドをヘモシアニンと結合させた化合物として合成し、マウス抗体を作製した。免疫組織化学によってセロトニン神経節から一定の距離をおいた胞胚腔細胞に受容体蛋白が分布していることを観察した。これらの細胞は顕微注入したセロトニンに反応したカルシウム波を発生することを観察し、免疫組織化学の結果と位置することを確認できた。これらの成果は平成13年度の動物学会等で発表し、現在数遍にまとめた論文の準備をしている。
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