ショウジョウバエを用いて、PDZタンパク質としての結合特異性に類似性があり、特にシナプスの構造と機能に関与することが予想されているPICK1とGRIPの解析を行った。現在までに、両分子共に全長cDNAのクローニングとシークエンスを終了した。その結果、PDZドメインなどの機能部位と考えられる構造はよく保存されていることが明らかになった。胚におけるRNAの発現は、PICK1については中枢神経系に特異的であり、またGRIPについては逆に筋細胞に特異的であった。これらのことは運動ニューロン週末のシナプス前後におけるそれぞれの分子の機能を示唆した。次にそれぞれの分子の全長コンストラクトをP因子法によりハエに導入した。またPICK1については、PDZドメインの機能部位と考えられている領域にアミノ酸置換を導入したコンストラクト、またPDZドメインのみのコンストラクトも作製してハエに導入した。これらのコンストラクトをUAS-GAL4システムにより強制発現させてその効果などについて調べたところ、通常の1コピーの発現ではGRIPを筋細胞に過剰発現させた場合に蛹期に致死となり、視神経細胞に異所発現させた場合にはrough eyeが見られるなどの効果が観察された。またPICK1の場合にはコンストラクトのコピー数を増やして筋細胞に強く発現させた結果、野生型全長の場合のみに蛹期に致死となる効果があることがわかった。その運動ニューロンの終末について調べたところ、しばしばその終末構造に異常が見られた。また機能喪失型の表現型を解析するために、パリンドローム型の遺伝子をUAS-GAL4システムによって発現させる方法によるRNA2重鎖法を行なった。その結果、PICK1、GRIP共に蛹期に致死となる効果がみられた。
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