アフリカツメガエル卵の植物極を受精直後に除去した。除去量が比較的多いときには(表面積比で60%以上)、永久胞胚様の原腸陥入しない胚(permanent blastula type embryos : PBEsと略す)、中間的な除去量のときには(表面積比で20-40%)、原腸陥入する背側軸構造のない胚(gastrulating non-axial embryos : GNEsと略す)が得られた。PBEs、GNEsとも背側形成に関わる遺伝子は発現しないが、PBEsでは中胚葉特異的遺伝子Xbraの発現もないのに対してGNEsではXbraの発現があった。我々は、PBEsは外胚葉のみからなるモデル系であり、GNEsは外胚葉と内中胚葉からなるモデル系であると考えている。 これまでに、PBEでは内中胚葉を指定するデターミナントであると考えられているVeg-Tが発現しておらず(GNEでは発現している)ことをin situ hybridizationにより確かめた。さらに、PBEにGNEの細胞質を注入することによりVeg-TmRNAが導入されることをin situ hybridizationで確認した。この細胞質注入胚では原腸陥入、Xbraの発現が起こった。Veg-TmRNAの注入でも同様に原腸陥入、Xbraの発現が起こった。この結果は、特定の細胞質の注入によって特定のmRNAが実際に移動したことを示す最初の例である。Veg-TmRNAの存在の有無と、原腸陥入、Xbra発現の有無がよく一致したので、Veg-TmRNAはこれらのプロセスに必須の因子であることが示された。
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