Xbra及びXbra3の2種類のプロモーターをプローブとしてMBT直後に起こるザイゴテイックな転写開始の分子機構を検討した。得られた結果は以下の通りである。 (1)MBT直後の遺伝子発現に関わる転写調節因子を明らかにするために、卵形成期に転写が起こる遺伝子を卵母細胞からスクリーニングした結果、既知遺伝子の他にChampignon、Xext1、XSu(H)、Xserrate1などの新規遺伝子をクローニングした。 (2)Xbra3とXbraのプロモーターを比較検討した結果、両者に共通するエレメントとしてSmad結合サイト、SIP1結合サイト、XSu(H)結合サイトなどの配列を確認した。 (3)Xbra3の上流2400bpを含むプロモーター領域には3カ所に潜在的なXSu(H)認識配列が存在した。βgalをレポーターとしてXbra3プロモーターの削除実験を行った結果、MBT直後にXbra3の転写開始が起こるためには、3カ所あるXSu(H)サイトのうち少なくとも1個のXSu(H)サイトが必要であることが示唆された。 (4)母性因子として卵形成期よりmRNAが検出されるXSu(H)について、抗体を作製してタンパク質の挙動を検討した結果、XSu(H)は受精以降の胚からタンパク質として検出され、卵割期に十分量のタンパク質が核移行することがわかった。 (5)モルフォリノオリゴDNAを用いて母性因子としてのXSu(H)タンパク質の合成を阻害する実験を行った結果、MBT直後のXbraの転写開始にはXSu(H)タンパク質が必要不可欠であることが示唆された。 以上の結果をNotchシグナルの最新知見と合わせて考えると、母性因子として卵細胞に蓄えられたXSu(H)は、卵割期にHDAC、SMRTと転写抑制複合体をつくり、MBT期以降はNICDと共に標的遺伝子の転写誘導に関わることが示唆される。
|