研究概要 |
肢芽ではShhとFGF-4の発現は正のフィードバックにより維持され,肢芽前側に適用したShhタンパク質で近傍のAERにFGF-4が誘導される。一方,FGF-4タンパク質はZPAでのShhの発現維持は出来るが,肢芽前側で異所的にShhを誘導することは報告されておらず,一度肢芽が形成された後ではFGFによるShhの誘導は起こらないと考えられてきた。しかし,後肢芽のAER前端直下にFGF-4を適用すると36時間後に近傍の細胞でShhの発現が見られた。Shhの発現には体幹からの細胞移動は関与しておらず,Hoxd13を誘導して部分的な前後軸の逆転が起こる。FGF-2やFGF-8などではShhの誘導は見られない。前肢芽と後肢芽ではFGF-4に対する応答能が異なり,後肢芽では肢芽形成後でもFGF-4によりShhの誘導が起こる。 四肢骨格パターンを制御する機構として間充織凝集の調節に注目し,その接着性を調節する因子としてEphA4とephrin-A2の相互作用を解析した。Ephrin-A2とEphA4は肢芽で相補的に発現し,ephrin-A2は肢芽の近位で,EphA4は肢芽遠位で強く発現していた。細胞接着性とephrin-A2との関連を調べるために,ephrin-A2を過剰発現させて間充織の接着性への効果を調べた。その結果,初期(ステージ20-21)の間充織では接着性は変化しなかったが,発生が進んだ(ステージ25-26)肢芽では間充織の接着性に変化が認められた。RCAS-ephrin-A2を感染させた肢芽の一部では骨格パターンの変化も認められた。肢芽で位置特異的に発現するephrin-AやEphAの相互作用は間充織の接着性を位置特異的に変化させ,これにより間充織凝集や骨格パターンが調節されると考えられる。
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