研究概要 |
四肢形態形成に関与する分泌性シグナル分子の骨格パターン形成における役割を調べ,次のような点を解明した。 Apical ectodermal ridge(AER)で発現しているWnt-10aを予定AER形成領域で過剰発現すると異所的なFGF-8の発現が誘導された。AER形成にはβカテニンを介するWntシグナリングが関与していると言われているので,Wnt-10aがβカテニン経路を活性化できるかどうか検討した。ニワトリ胚線維芽細胞でWnt-10aは細胞質内にβカテニンを蓄積することができたので,Wnt-10aがβカテニン経路を活性化することでAERの誘導に関与していると考えられる。 四肢骨格パターンの制御機構として間充織凝集の調節因子に注目し,これまでのPI-PLCや抗EphA抗体による阻害実験から関与が推定されるephrin-A2を中心に調べた。ephrin-A2は肢芽の基部で強く発現し,先端部で発現する受容体EphA4と相補的である。両者の発現はAERで産生されるFGFの制御を受け,また細胞培養下では採取した場所に応じた発現が維持される。RCASを用いてephrin-A2を肢芽先端部で過剰発現させた結果,肢芽先端部の指骨に部分的融合や異所的分岐などの変化が認められた。細胞接着性との関連を検討するため,ephrin-A2過剰発現細胞の接着性を調べると,初期肢芽の間充織では接着性は変化しなかったが,後期肢芽の間充織では変化が見られる。ephrin-A2の過剰発現によって初期間充織の軟骨分化は影響されなかったが,後期間充織では軟骨結節形成が顕著に抑制された。
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