APPはα/β切断→γ切断経路を経てプロセッシングを受けるとされているが、分泌蛋白としてのAPPの細胞内sortingと照らし合わせるとこの経路のみではいくつかの矛盾が生じる。例えば、APPのα切断は細胞表面で、γ切断はER起こるとされており、α/β切断→γ切断経路が正しいのであれば、APPは細胞表面まで運ばれてα切断を受けた後、γ切断を受けるために再度ERに戻らなければならない。H13年度は、この矛盾に一つの解答を与えるためにこの経路以外にγ切断→α/β切断経路が存在しうる可能性を検証した。(1)γ切断部位にストップコドンを導入したAPPはα/β切断に対して感受性がなかった。(2)以前に確立したαあるいはβ切断を選択的に抑制する変異型APPのプロセッシングを検討したが、γ切断のみを受けたγ切断産物は検出できなかった。(3)野生型及びα/β切断抑制APPにER-targeting motifを付加しAPPの発現をERに集積した条件で、APPのプロセッシングを検討したが、γ切断産物を検出できなかった。以上より、APPのプロセッシングに際してγ切断→α/β切断経路をとる可能性は低いと結論した。そこでα/β切断→γ切断経路が唯一存在する経路であるならば、少なくともα切断が細胞表面上のみで起こるとするのは矛盾が生じ、APPsortingのより早期にα切断が起こるはずである。我々はこの間APPのプロセッシングを検討する中で、α切断は従来の細胞表面だけでなくERにおいても行われることを観察した。これについては14年度にさらに詳細な検討を加える予定である。
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